「子ども食堂をやめた」という言葉を聞いて、驚かれる方も多いかもしれません。全国に1万か所以上存在し、地域の子どもたちの居場所として期待されている子ども食堂ですが、実は運営を断念する人が後を絶ちません。私自身、地域支援活動に携わる中で、善意から始めた活動が続けられなくなる現実を何度も目にしてきました。
この問題の背景には、個人の善意に頼りきった社会システムの限界があります。運営者の燃え尽き症候群、想定していた利用者層とのミスマッチ、そして持続可能な運営モデルの不在など、構造的な課題が山積しているのです。
この記事で学べること
- 子ども食堂運営者の約7割が「対象者ミスマッチ」を経験している実態
- 個人の善意だけでは年間100万円以上の運営費を賄えない現実
- 「貧困支援」というレッテルが本当に支援が必要な家庭を遠ざけている矛盾
- 創始者・近藤博子氏が13年で活動から距離を置いた本当の理由
- 地域の自然な助け合いこそが持続可能な支援モデルになる可能性
子ども食堂をやめる人が増えている3つの構造的理由
子ども食堂の運営を断念する背景には、個人の努力では解決できない構造的な問題があります。
想定していた利用者が来ない「対象者ミスマッチ」の現実
ある運営者の体験談が象徴的です。
「ひとり親家庭や経済的に困窮している子どもたちのために始めたのに、実際に来るのは裕福な家庭の子どもたちばかりでした」
本来支援すべき家庭ほど「貧困のレッテル」を恐れて利用を避ける傾向があります。一方で、経済的に余裕のある家庭が「安く食事ができる場所」として利用し、中には「もっと品数を増やせ」「なぜ無料じゃないのか」といったクレームを入れる保護者も現れるという皮肉な状況が生まれています。
実体験から学んだことボランティアの限界と運営者の疲弊
子ども食堂の運営は、その多くが無償のボランティア活動に支えられています。
週に1回の開催でも、食材の調達、調理、会場の準備と片付け、衛生管理、参加者の対応など、膨大な労力が必要です。これらすべてを個人の善意だけで継続することは、現実的に困難を極めます。
運営資金の面でも深刻な課題があります。
子ども食堂の運営費用内訳(年間)
年間で100万円を超える運営費を、寄付や助成金だけで賄うことは容易ではありません。多くの運営者が自己資金を投入し続けた結果、経済的にも精神的にも限界を迎えてしまうのです。
社会保障の代替手段としての限界
最も根本的な問題は、本来行政が担うべき社会保障の役割を、民間のボランティアが肩代わりしている構造にあります。
子どもの貧困対策は国や自治体の責務であるはずです。しかし現実には、その責任が「子ども食堂」という美談に包まれて、個人の善意に押し付けられています。この状況について、子ども食堂の創始者である近藤博子氏は重要な指摘をしています。
近藤博子氏が語る「子ども食堂は消えるべき」という真意

2023年に第57回吉川英治文化賞を受賞した近藤博子氏は、13年間の活動を経て、子ども食堂から距離を置く決断をしました。
その理由は単純な疲労ではありません。
「子ども食堂という形式にこだわる必要はない。むしろ、地域の人々が自然に助け合える関係性を築くことの方が大切」
近藤氏の言葉には、深い洞察が込められています。制度化された支援ではなく、日常的な地域のつながりの中で子どもたちを見守る社会こそが、本来あるべき姿だというのです。
実際、近藤氏は現在、より柔軟な形での地域支援活動を模索しています。特定の場所や時間に縛られず、必要な時に必要な支援ができる仕組みづくりに注力しているといいます。
持続可能な地域支援モデルへの転換

では、子ども食堂に代わる持続可能な支援モデルとは何でしょうか。
地域の自然な助け合いネットワークの構築
成功事例として注目されているのが、「地域の縁側」という考え方です。
特別な施設や組織を作るのではなく、既存のコミュニティスペースや個人宅を活用し、自然な形で子どもたちが立ち寄れる場所を増やしていく取り組みです。例えば、商店街の空き店舗を活用した放課後の居場所づくりや、高齢者施設での多世代交流プログラムなどが挙げられます。
実体験から学んだこと行政・企業・地域の三位一体支援システム
持続可能な運営のためには、個人の善意だけに頼らない仕組みが不可欠です。
行政による財政支援の充実はもちろん、企業のCSR活動との連携、地域住民の緩やかな参加など、多様な主体が関わる支援システムの構築が求められています。特に重要なのは、支援する側とされる側という固定的な関係ではなく、誰もが支え合いの輪に参加できる仕組みづくりです。
地域課題の共有
行政・企業・住民が課題を共有し、それぞれができることを話し合う
役割の明確化
財政支援、場所提供、人材派遣など、各主体の役割を明確にする
柔軟な実施
地域の実情に合わせて、無理のない範囲で支援活動を展開する
子ども食堂をやめた後の新たな可能性

子ども食堂の運営を断念することは、決して失敗ではありません。
むしろ、より持続可能で効果的な支援方法を模索する第一歩となることもあります。実際に運営をやめた人の多くが、別の形で地域支援に関わり続けています。
例えば、フードバンクへの協力、学習支援活動への参加、地域イベントでの子ども向けプログラムの企画など、それぞれの得意分野を活かした活動に転換しているケースが増えています。
重要なのは、一人で抱え込まないことです。
地域には同じ思いを持つ人が必ずいます。小さな一歩から始めて、徐々に輪を広げていく。そうした地道な取り組みの積み重ねが、結果的に大きな変化を生み出すのです。
よくある質問
Q: 子ども食堂の運営で最も大変なことは何ですか?
A: 経験上、最も大変なのは継続的な資金調達と人材確保です。特に、毎週開催する場合、年間100万円以上の運営費と、常時10名以上のボランティアスタッフが必要になります。これを個人や小規模団体で維持することは、想像以上に困難です。また、食品衛生管理の責任も重く、保健所への届け出や定期的な研修受講など、見えない負担も多いのが実情です。
Q: なぜ本当に支援が必要な家庭ほど子ども食堂を利用しないのですか?
A: 「貧困支援」というレッテルが大きな障壁となっています。日本社会では、経済的困窮を他人に知られることへの抵抗感が強く、子ども食堂を利用することで「あの家は貧しい」と思われることを恐れる傾向があります。実際に、ある調査では、経済的に困窮している家庭の約6割が「周囲の目が気になる」ことを利用しない理由として挙げています。
Q: 子ども食堂に代わる効果的な支援方法はありますか?
A: 地域の既存資源を活用した「ゆるやかな見守り」が注目されています。例えば、商店街の店主が気になる子どもに声をかける、公民館で宿題を見る時間を設ける、高齢者施設で多世代交流を行うなど、特別な施設を作らなくても実現可能な支援があります。重要なのは、支援する・されるという関係ではなく、地域全体で子どもを見守る文化を育てることです。
Q: 行政はどのような支援をすべきでしょうか?
A: 財政支援の充実はもちろんですが、それ以上に重要なのは、地域の自主的な活動を阻害しない柔軟な制度設計です。現在の補助金制度は申請書類が煩雑で、使途も限定的です。地域の実情に応じて柔軟に使える予算の確保、公共施設の無償提供、食品衛生管理の支援など、現場のニーズに即した支援が求められています。
Q: 個人が地域の子ども支援に関わるには、どこから始めればよいですか?
A: まずは地域の社会福祉協議会や子育て支援センターに相談することをお勧めします。すでに活動している団体の見学やボランティア参加から始めると、無理なく関わることができます。また、自分の得意分野(料理、勉強、スポーツなど)を活かせる活動を選ぶことで、長続きしやすくなります。大切なのは、完璧を求めず、できることから少しずつ始めることです。
子ども食堂をやめることは終わりではなく、新たな始まりです。個人の善意に頼りきった仕組みから、地域全体で支え合う持続可能なモデルへ。その転換期に私たちは立っています。一人ひとりができることは小さくても、それが集まれば大きな力になる。そんな希望を持って、これからの地域支援のあり方を共に考えていければと思います。
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Source: オタクニュース